症 例
▪️40歳代・男性の場合[読む]
▪️入れ歯が古くなり、上下が当たっていない場合[読む]
▪️入れ歯が安定せず、ガタつきを起こす場合[読む]
▪️入れ歯が安定せず、ガタつきを起こす場合[読む]
▪️98歳女性、上下義歯予後5年経過の場合[読む]
▪️患者さまの体験談(腰痛と歯周病の改善))[読む]
▪️患者さまの体験談(腰痛とかみ合わせの改善))[読む]







前後的な噛み合わせ偏位


前後的な噛み癖が存在します
 噛み癖(偏位咀嚼)には左右と同時に、前後的な噛み癖が存在します。通常堅いものを食べるときなどは、主として奥歯(第一、第二大臼歯)を使うことが多いようで、特に若年者に多くみられる傾向にあります。
 年が経つにつれ、次第に奥歯の咬耗(すりへり)やむし歯などによる歯の喪失、などが起こってきます。すると咬合高経(かみ合わせの高さ)は奥に行くにしたがって低くなるため、頭部が後方に傾斜することになります。
 そのような頭の後方重心移動が起きる場合、その姿勢を補正するため、胸椎、腰椎のあたりで調節することになり、腰が前に倒れる、いわゆる猫背姿勢となり、脊椎(頚椎、胸椎、腰椎)は前後的に湾曲度が増すと考えられます。
このための前後的重心偏位で脊椎椎間板の圧迫が生じるようになり、各種神経伝達障害に起因する症状も合わせて、現れやすくなると考えます。
 このような咬合状態で聴力測定を行った結果、大臼歯部偏位咀嚼の人の聴力は、125~500Hz(低周波帯)の低下として、顕著に表れています。この聴力低下パターンは耳鼻科における突発難聴パターンに類似した低周波の低下です。
 また、歯科疾患(虫歯や歯周病)などは、奥歯から進行してくることが多く、高齢者に至っては、犬歯が比較的最後まで残るため、犬歯小臼歯部偏部噛みとなってきます。
犬歯、小臼歯部咀嚼の場合の聴力値は、2.000~8.000Hz(高周波帯)の低下が顕著です。この聴力パターンは、同時に耳鼻科の老人性難聴パターンと一致しています。

姿勢の前後的変化
 大臼歯部の高さが低くなると直立時、頭部は後方に偏位する、そのため、筋肉バランスなどにより、体全体でその姿勢を補正する動きが無意識のうちに行われ、前かがみ姿勢(猫背姿勢)になります。
 頭位置の変化から、頚椎の湾曲度が増し、頭部の上向き姿勢をカバーするため、次に腰椎が前方に傾斜することになると思われます。
 これが猫背姿勢の原因であり、同時に肩こり(首こり腰痛、ヒザ関節痛)の原因となる可能性が高いと思われます。
 さらに頚椎、胸椎、腰椎の傾斜に関連して、椎間板の圧迫が起こり、その部位を通過している神経の圧迫、などからその領域の神経伝達機能障害が発生するものと思われます。
 第5,6,7番、頚椎あたりからは、腕および手の運動機能をつかさどる橈骨、正中、尺骨神経などがでており、その部位の椎間板圧迫などで、腕のしびれや手の運動機能に関するさまざまな障害が現れる可能性があります。 さらに、前傾姿勢は腰からヒザの関節に影響を与え、変形性膝関節症などの症状を呈するものと考えます。

左右噛み合わせ偏位

左右的バランス、スタビライジング現象
 むし歯などの歯科疾患を放置することにより、疾患部分を避けて食べる習慣になります。これを偏位咀嚼といいます。ここから噛み癖が発生します。
 噛み癖は右または左、また、時には、奥歯のみで噛む習慣となり、それによって噛み癖側の歯の咬耗(すりへり)が起こります。


 片側の歯のすりへりは、左右の高さの差異を生じ、そのため頭全体の傾きに発展します。頭全体の傾きは、頭を支えている筋肉により、いつも頭を正常位置に保持するように無意識のうちにはたらいているため、その姿勢保持に関連した筋肉の緊張が持続します。その筋肉の緊張による肩こり、頭痛がまず発生します。
 歯科疾患による噛み癖(偏位咀嚼)は、頭の位置を噛み癖側に傾け、それによって体の重心偏位(重心移動)をおこすため、体の中心軸(脊椎の形状)にも影響をあたえ、筋肉バランス異常が原因の筋肉症状(肩こり、腰痛)などが起き易くなると同時に、脊椎そのものの湾曲および変形から、変形性の脊椎症状が現れてきます。
 このような症状は、噛み癖の発生原因となっている歯科疾患の治療を行い、左右で均等に咀嚼をおこなうように咀嚼指導することにより、それらの症状の軽減が期待できるのです。
 これらの歯科処置後の咬合咀嚼状況改善で肩こり、腰痛など全身症状の減少がみられることを咀嚼咬合の安定化効果(スタビライジング効果)と言い、その状況が咬聴計で確認することが可能となりました。
 また、左右均等に噛むことで、両側の筋肉の形状が均等になり、左右、バランスのとれた顔だちとなり、口のまわりの筋肉も全て働くため、あごの血行循環の均等化などによって、血色もよくなり、また筋肉のスリム化などで、いわゆる小顔になって見えるのです。

左右バランス障害に関連する症状群

筋肉バランス異常に関連した障害
 肩こり:噛み癖側の反対側の肩こり症状
 腰痛:噛み癖同側の腰痛症状
 大腿部痛
 ヒザ痛
脊椎(頚椎,胸椎、腰椎)の変形性症状
脊椎湾曲および椎間板による神経圧迫による症状


橈骨(とうこつ)神経マヒなど、手および腕の運動機能障害
手足のしびれなど知覚障害
肋間および坐骨神経痛症状
肺および各種内臓機能障害
体重心バランス偏位による、大腿部および膝関節障害


入れ歯による歩行不全

入れ歯の不調で噛み合わせが悪くなる



 入れ歯の不調で噛み合わせが悪くなり、それが原因での症状では、上あごと下あごの間に、ある程度の高さがない場合(入れ歯が入っていない場合や低い入れ歯を長く使用している場合)、人間は重い頭を下あごで支えているので、下あごで頭を支えることができなくなるため、筋肉バランスが悪くなり、頭の位置が変わり、体の重心が正常な位置ではなくなるのです。
 ところが、頭の位置がある程度正常に戻ってくると、筋肉バランスが回復し、立つこと、さらには歩くことができる状態によみがえらせることができるでしょう。
 長坂歯科では、入れ歯を製作する際、高さや大きさを決定するデータのひとつとして、歩きやすい、しゃがみやすい、階段の上り下りがしやすいという、からだの運動能力の変化を参考にして決定するようにしています。
 これは、ご自分でもかみ合わせの重大さを入れ歯を用いて実験することができます。例えば、入れ歯を使用している方は、入れ歯を入れた状態と外した状態で、歩いてみる、しゃがんでみる、階段の上り下りを行う、などのいくつかの条件で行ってみると、その違いが分かると思います。

頭痛・肩こり・腰痛・入れ歯による歩行不全の症例

症例(1)Sさん 40歳代・男性の場合
 銀行員のSさん(40歳代・男性)が、来院されたきっかけは、口を開けようとした時に左のあごに痛みを感じ、その時から口が大きく開けられなくなり、いわゆる顎関節症の症状がでたためでした。
 初診時の口の中の状況は、左右小臼歯部にむし歯があり、大きな穴があいていました。また、前歯の歯並びも悪く、左右の奥歯でしか噛むことができない状態でした。
 それまでの症状を聞いてみると、頭痛があり、同時にひどい肩こりで首のまわりから背中にかけて、たえず誰かをおぶっているような重さを感じるということで、2日に一度は整形外科で牽引治療を受け、週に一度は、マッサージに通っているほどだったのです。  首の可動範囲の検査や腕の運動機能検査を行った結果でも、その状況が判定できるほどで、聴力による値は左右ともに低い音が聞こえにくい状況にあることがわかりました。
 口の中の状況から、左右小臼歯部のむし歯がしみるなどの原因で、前歯、小臼歯部で噛むことができなく、もっぱら奥歯で噛んでいたのです。
 治療では、まず、むし歯の治療を行い、前歯、小臼歯でしっかり噛める状態にして、左右および前後で均等に噛めるかみ合わせトレーニングをはじめました。
 歯の状態やかみ合わせの状況がよくなるにつれ、いままで悩んでいた、頭痛、肩こりの自覚症状が減少しただけでなく、聞こえにくかった左右の低い音が正常レベルにまで回復してきました。
 そして、週2~3回の首の牽引治療も間もなく必要なくなるほどに改善しました。
 現在、その頑固な肩こり、頭痛と決別して、10年近くになりますが、かつてのそれらの症状が出ることはないそうです。

頭位置の変化から、頚椎の湾曲度が増し、頭部の上向き姿勢をカバーするため
 大臼歯部の高さが低くなると、直立時、頭部は後方に偏位するため、筋肉バランスなどにより、からだ全体でその姿勢を補正する動きが無意識のうちに行われ、前かがみ姿勢(猫背姿勢)になります。

頭位置の変化から、頚椎の湾曲度が増し、頭部の上向き姿勢をカバーするため、次に腰椎が前方に傾斜することになると思われます。
 これが猫背姿勢の原因であり、同時に肩こり、首こり、腰痛、ヒザ関節痛の原因となる可能性が高いと思われます。
 さらに頚椎、胸椎、腰椎の傾斜に関連して、椎間板の圧迫が起こり、その部位を通過している神経の圧迫、などからその領域の神経伝達機能障害が発生するものと思われます。
 第5・6・7番、頚椎あたりからは、腕および手の運動機能をつかさどる橈骨(とうこつ)、正中、尺骨神経などがでており、その部位の椎間板圧迫などで、腕のしびれや手の運動機能に関するさまざまな障害が現れる可能性があります。
 さらに、前傾姿勢は腰からヒザの関節に影響を与え、変形性膝関節症などの症状を呈するものと考えられます。

症例(2)入れ歯が古くなり、特に奥歯は、上と下が当たっていない場合
 都内に住むKさんは、地下鉄を使って来院されましたが、息をするのもつらそうに「先生、やっとこれました。地下鉄から診療室まで、長い階段を杖をつきながら上ってきました」と言うのです。
 早速、口の中を診させてもらうと、入れ歯が古くなり、特に奥歯は、上と下が当たっていない状況でした。
 また、下の前の歯だけが残っており、その前歯でしか噛めない状態でした。
 治療としては、低くなった奥歯を上げるということと、いままで噛んでいた前歯の当たりを少なくすることで、左右奥歯でかみ合わせトレーニングを行い、歩いてもらうと、杖なしで歩けるようになりました。

症例(3)入れ歯が安定せず、ガタつきを起こす場合
 2~3年前の年の暮れのある日、以前、私のところへ通院していたBさん(98歳・男性)が、「先生お久しぶりです。私も高齢になりまして、来年になると、こちらに来れるかどうか分かりませんので、今日は、車椅子を押してくれるヘルパーさんが来てくれたので、お願いして連れてきてもらいました」といって来院されました。
 Bさんが言うには2~3年前より、だいぶ前に作った入れ歯が徐々に合わなくなり、噛むと痛いので、最近では、食事の時を除いて外しているので、治してほしいということでした。
 調べてみると、下のあごの骨が下がり、そのために、入れ歯が安定せず、ガタつきを起こし、長い間入れていると歯ぐきに傷がつき、痛みのために外していることが多くなり、また、傷がついている部分をさけて噛むという片噛みの状態でした。
 かみ合わせを調べるために、聴力を計測したところ、左側の耳は聞こえても、右側の耳は全く聞こえないという数値で、右側だけで噛んでいることがデータでも確認できました(表1・左側参照)。



 とりあえず応急的に、その入れ歯が口の中で安定するように治療を行い、外さなくても良い状態にしました。
 そして、同日、痛みを感じなくなった後、右側、左側とかみ合わせトレーニングをしてもらい、それらひととおりの治療が終わった後、再び聴力を計測したところ、いままで聞こえていなかった右側の耳が、左側と同じ程度に回復していました(表1・右側参照)。  この回復にわたしも非常に驚かされましたが、この後にそれ以上に驚かされることが起きました。
 といいますのは、これだけ聴力の値に変化があるということは、頭位の左右バランスも正常になっているに違いないと考え、もしや立てるのではないかと思われたので、Bさんに、「一度立ってみましょう」と、うながしました。するとBさんは、「そんなことはできませんよ、だってもう2年も車椅子の生活ですから」と躊躇されましたが、「わたしが手を貸しますから」と強く言って、Bさんの両手を持ち「一、二の、三」と掛け声をかけ、うながしたところ、Bさんは、スーッと立ち上がることができたのです。
 ここまでくると、歩くこともできるかもしれないと思い「少し歩いてみましょう」と言って一歩、二歩と導くと、Bさんも私について一歩、二歩と歩き始めたのです。
 その後、診療室内の通路を1~2往復したあと、Bさんは「おれ、ちょっとトイレに行ってくる」といって、医院外にあるトイレまでヘルパーさんと一緒に歩きだしたのです。
 その時一緒に来られたヘルパーさんも「こんなことがあるのですね。いままでこのようなことは一度もみたことがありません。入れ歯って大事なものですね」と言って非常に驚いていました。

症例(4)入れ歯が安定せず、ガタつきを起こす場合
 以前、当院に通院し、かみ合わせバランスの改善で、からだ全体の症状が良くなり、快適に生活ができるようになった患者さんが、以前作った入れ歯が落ちて調子が悪いというご主人を連れてこられました。
 聞くところによると、Tさん(80歳・男性)は、入れ歯が落ちるという不具合とともに、最近、微熱が続き、耳の聞こえも悪くなり、また、肩が痛く、首が回らない、歩行に支障をきたしていることで、何をする気も起こらず、何か重篤な病気にかかっているのではないかという心配で、いらいらする毎日を過ごしているとのことでした。
 医科にてMRI、CTなどの一連の検査を受けましたが、原因が分からないということでした。
 口腔内を調べてみると、上あごの総入れ歯の適合が悪く、ガタつき、口を開けたり、噛んだりするたびに落ちてくる状態で、そのために入れ歯が絶えず動くことで、歯ぐきに傷ができ、そこから感染して、歯肉の炎症になり、微熱が続いていたことが分かりました。
 聴力を測ってみると、左右ともに低下しており、耳鼻咽喉科では、老人性難聴で補聴器を薦められているということでした。
 聴力のデータからも、左右に低い音から高い音にかけての聴力の低下があり、特に、高い音になるにつれて低下傾向が強くなるという、いわゆる老人性難聴タイプになっていました。
 これをかみ合わせの基準にあてはめると、左右低い音の低下は、左右の奥歯が低くなり、あごの関節の先端が側頭骨を刺激することによる反応と考えられます。また、高い音の低下は、残っている前歯の当たりが多いということが考えられます。
 入れ歯の不適合で、全体に低くなった状態を改善するために、奥歯の高さを盛り上げ、かつ前歯の接触が少なくなるような処置を行いました。
 その処置を行ったことで、同時に三つのことが改善できました。
 第一番目として、上あごの入れ歯の吸着がよくなり、安定しました。
 次に小臼歯から奥歯まで、全体でバランス良く噛むことができるようになったことです。

症例(5)98歳女性上下義歯予後5年経過の場合
 この患者さんは5年前、93歳の時にヘルパーさんと二人で車椅子で来院されました。

主訴:開口障害
歩行機能不全で車椅子でヘルパーさんと一緒に来院されました。

頭位不安定のための歩行機能障害

1・歯牙の疼痛(残存歯)
2・歯周病(歯牙動揺のため咬めない)
3・欠損など補綴(義歯)
4・口臭
5・TMD症状(頭痛・腰痛・歩行障害・難聴)











義歯作成5年後、再来院されましたが、歩行および腕機能の異常もなく、また全身症状でも異常は認められませんでした。